今年最後の記事はこれで締めくくることになる。
先週、朝のTVニュースでとあるおっさんコメンテーター(名前本当に忘れた)が、
まだこんなことしてんのか!
なんて批判してた。
このおっさん含め、いろいろコメンテーター立場の人が批判を繰り返していたようだが、彼らにこう言わせてもらおう。
お前らまだこんなことしか言えないのか!
本当に日本のコメンテーターは頭が悪いし、大したこと言わないやつがあふれている。
(もちろん、頭が良くてちゃんとしたコメンテーターもいるけども。
宮崎哲也さん、モーリ―ロバートソンさんとか…批評家として支持できる方がいないわけじゃない)
さて、ことをかいつまんで、私の意見を完結にまとめることとしよう。
最初に意見を言わせてもらうと、
今回のリニア談合事件に事件性はない。ということだ。
説明不足のところは、読者側でググってもらいたい。
スーパーゼネコン在籍の友人はいくらかいるけど、まだ今回のことに関する内情はまだ聞いてない。
というか、内情を実際に聞いてしまったあとだと、情報を漏らしたらまずいってことになって語れなさそうなので、聞く前に書いてしまおう。
あくまで土建業にかかわる人間として、一般公開されている情報を元に意見を書く。
推理のための情報整理
まずは一般公開されている情報から、物事を整理してみよう。
リニア工事の巨大さ
リニア工事の総工費は9兆円と言われている。
それを、東京~名古屋間は2027年、名古屋~大阪間は2037年(当初予定2045年)に開業を予定しているのである。
なぜここまでに工期が長いのだろうか?
ここで、JR東海の立場で考えてみよう。
東京~名古屋間が開通しないと、リニア新幹線の運行を開始できないのだから、それまでは収益が生まれない。
つまり、2027年までは、ただひたすら借金を重ねて工事を続けるのである。
リニア新幹線を開通させると決定した以上、商業的には一刻も早く東京~名古屋間の運行を開始したいに決まっている。
にもかかわらず、開通は10年後なのである。
これは、工事がかなり特殊な地下工事&トンネル工事であることに起因する。
この特殊な工事の工事費用がこれだけ莫大だとということは、つまり、限られた日本国内の技術者も労働力を全て使い切ってもこれだけの期間がかかってしまうということなのである。
ゼネコンの思惑
そんな日本の労働力を使い切るような膨大な業務。
そもそも、どこか1社でまとめられるわけがないのだ。
(どこがトップでも、実働部隊は同じだったりしそうだが)
各ゼネコンとしても、リニア工事の受注はある程度欲しいものの、全部は絶対にいらないのである。
入札に対して見積を提出しようにも、これだけ巨額の工事である。
その見積もりの前提条件となる地盤調査も不足しているだろう。
そんな状況で見積書をまとめるのにも、概略の設計や施工計画に充てる経費だけで、数億円かかる。
そして、結局のところ、そもそもその一部しか工事を請けたくないのである。
ただでさえ、オリンピック開業に向けて忙しい土建業界は、現在見積のために人員を割けない状況なのである。
よって、範囲を絞ってより精度の高い見積もりをするためにも、各社で役割を分担することになるのも自然の流れだと思われる。
それを「受注調整」と世間では呼ばれるのだろう。
JR東海の立場
さて、ここで、今回のことは「談合」にあたるのだろうか?
法的なところは今後の東京地検の判断に任せるとして(そもそもそのあたりは専門ではないし)、談合はなぜダメなのかは簡潔に整理しよう。
談合は、「ゼネコンがすごく儲かって、発注者がめちゃ損をするからダメ」なのである。
これを分かりやすく、以下の例え話で説明しよう。(わかる人は読み飛ばし可)
発注者Aが、適正価格1億円の工事を入札にかけたとする。
しかし、ゼネコン4社は裏で話し合い、それぞれ、2億円、2億1000万円、2億2000万円、2億3000万円の見積書を提出してきた。
なので、ゼネコンB社が2億円で受注できた。
1億円の工事に対しては純利益が500万円だったと仮定するのなら、2億円で受注できてしまうと、その収益は500万円→1億500万円と21倍である。
つまり、ゼネコンB社は大儲けだ。
このやり方でゼネコン4社で持ち回って順番に行えば、労せず大儲けでき、発注者Aは大損をこく。
また、自由競争による切磋琢磨が進まず、技術向上もコストカットもできない。
だから、談合はダメなのである。
しかし、今回のリニアのことはどうだろう。
JR東海は全体工事を22区間に分割した。
区間ごとに入札を始めたとする。
最初の区間には多くのゼネコンが群がることになるだろう。
そうすると、激しい価格競争を勝ち残った「最低価格の見積書を提出」しなければ受注できない。
短期間で作成した見積もりなら、もしかしたら、何か重大な見積もり漏れをしてしまったゼネコンが受注することにもなりかねない。
つまり、リスクも高いし、儲からないのだ。
そして、いくつかの工事を受注したゼネコンは受注過多(いわゆるおなかいっぱい)になってしまい、以降の入札は辞退していくことになる。
競争相手が徐々に減ってくるのだ。
そうなると、入札時期の遅い工事は、高い金額でも入札できてしまう。
つまり、JR東海が工事の後半で大損こくのである。
いうなれば、JR東海が損をしていなければ談合ではない。のだ。
スーパーゼネコン4社内に、仲良しこよしで情報がつつぬけだったわけだが、JR東海内にもそのネットワークは通じているはずであり、こんなゼネコン内の内情は知られているはずだ。
つまり、JR東海もこの受注調整をわかっていて黙認していたに決まっているのだ。
だって、工事が巨大すぎて、そうしないと適正な価格で契約が進まないから。
(見積もり漏れがあって安すぎても、結局後でもめるしね)
つまり、今回のことを発注者のJR東海が理解した上で進めていたのであれば、それは思想的には談合ではないのである。
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東京地検はなぜ動いた?
私には、「マジシャンが貨幣に細工したのを逮捕している」ことのように思えた。
(貨幣損傷等取締法違反。その昔、貨幣の価値より、元の金属の価値が上回っていたため、貨幣を溶かして金属として売却させるのを防ぐための法律。今は損得勘定上やる意味がないのだが、法律が撤廃されていないので、たまに貨幣貫通マジックのために細工をしたマジシャンが捕まる)
被害者がいないのになぜ騒ぎ立てるのか?
そんなしょーもない喧嘩に、我が国の大事な建設業を巻き込まないでいただきたい。
あと、しょーもないコメントしかできない勉強不足の無能コメンテーターはさっさと辞めろ。
それを見破れない視聴者もダメダメだけども。
さて、ようやく書き終えたので、正月明けの同窓会で各社スーパーゼネコン、JR東海に在籍の友人に内情を聞いてみるとしよう。
きっと、「部署が全然違うから、内情は全く知らんよ?」という建設的な回答を聞かせてもらえるだろう。